韓国・慶州の名刹で世界遺産の仏国寺に、今秋、国の助成を受けて博物館・聖宝館が建設される。そのオープニングに合わせて愛知県瀬戸市で学習塾を経営し平和統一聯合愛知県本部副会長の南碩煥さん(76)が収集した仏教美術品約二百点を寄贈する。
また、南さんと知人で名古屋市内の仏師、福井照明さん(62)も一本造りの毘沙門天など四天王像四体を贈る。その寄贈式が3月10日に仏国寺の李性陀大住職らが来日して在日韓国民団愛知県瀬戸支部で行われたが、4月には聖宝博物館建設諮問委員長で韓国教員大学名誉教授の鄭永鎬博士や学芸研究員ら3名が22日より3泊4日の日程で南さん、福井さん宅の寄贈品を韓国に搬出する作業のために来日し交歓の場が持たれた。
南さんは日韓親善の活動に尽力されるとともに、仏像に関心を抱き研究を深めながら中国、インド、ネパールなどシルクロードをこれまで40年旅し数々の古代遺跡や仏像にめぐり合い、コレクションとして収集してこられた。それだけに、今回寄贈する美術品は「自分にとっては子供の様に大切」と韓国への搬出に先立ち20日、親交の深い弘誓寺・前田由来住職(曹洞宗)を導師に旅立っていく美術品の安全と安泰を祈念する送別の儀式を身内や関係者ら20名が集まって厳かに執り行った。
また、名古屋市守山区に仏像彫刻工房を開く福井さんは京都で仏師の修行後、奥飛騨に入り独自の修行を積み工芸展や美術展で数々の賞を受賞。現在は日輝美術協会の常任顧問を務める。
搬出にあたり「南先生が私の作品を気に入って頂いた事から考古学の鄭先生とも親しくなり、三人でシルクロードの仏教遺跡巡りの旅にご一緒させて頂いたのがきっかけ」と出会いをふり返りながら「一瞬の出会いが仏縁のロマンとなり、伝統ある韓国の仏国寺の博物館の一角に日本で製作された仏像が納入されることに喜びと感謝です」「朝鮮より仏教が伝来して約千五百年。悠久の時を経て仏国寺に里帰りするようで感無量」とその思いを語った。
今回寄贈される仏像等美術品については、仏国寺が1月に鄭委員長と学芸研究員ら専門家を派遣来日させて「聖宝調査書」を作成、「太子帰城」(2~3世紀インド)や「葡萄瑞獣紋銅鏡」など原籍がインド、中国であるものや現在は実物が存在しない石碑の拓本など価値の高いものがある。
二人の寄贈品は博物館内の20坪程の特別展示室に設置される予定で、開館式に合せて関係者は韓国領事館や地元民団の協力を得て見学ツアーを企画する予定。