私が、世界基督教統一神霊協会(統一教会)の創始者文鮮明師に強い関心を抱いたのは、1991年、平壌を訪問されて12月6日に、朝鮮民主主義人民共和国の金日成主席と会談し、南北離散家族再会、南北経済協力、金剛山開発、朝鮮半島の非核化、南北首脳会談推進等について合意したというニュースに接したからであった。これを契機に私は文鮮明師に関する文献を読むようになった。そうした中で、金日成主席と文鮮明師が、主席を兄とする義兄弟の契りを結んだという事実を知り、深い感銘を受けた。(「文鮮明自伝-平和を愛する世界人として」)創芸社・268頁)
1994年7月8日、共和国の全人民の悲しみに包まれながら金日成主席が逝去された時、文鮮明師は世界日報社社長の朴普熙氏を弔問使節として平壌に遣わした。主席の後継者である金正日総書記は弔問使節を迎接して謝意を述べた。2011年12月17日に金正日総書記の逝去に際しても文鮮明師は弔問使節団を送り深甚なる哀悼の意を表した。
2012年9月3日に文鮮明師が聖和された悲報を受けて、金正恩朝鮮労働党第一書記は弔電を送り「文鮮明先生は逝去されたが民族の和解と団結、祖国統一と世界平和のために傾注した先生の努力と功績は永遠に伝えられるでしょう」と、その功績を讃えた。
このように、歴代の共和国の領導者と文鮮明師との間で築かれた深い信頼と強固な紐帯は、祖国統一を希求する我が民族にとって貴重な財宝となっている。
現在平壌には、文鮮明師の民族愛を象徴する平和統一センターが活動しているし、また、ポドン江ホテルと平和自動車が運営されて、共和国発展の一助となっている。
私は早くから「人間はあらゆるものの主人であり、すべてを決定する」という金日成・金正日主義の哲学思想を自らの信条として、教育と文筆、講演を通じて祖国統一運動に従事してきた。ある機会に恵まれて、長野県の平和統一聯合に招かれて統一問題をテーマに講演したのだが、この時に心を打たれたのは、聴衆の真摯な態度と真剣そのもののまなざしであった。
それで私は、平和統一聯合が実に立派な組織であることを実感した。それ以来、私は機会あるごとに、この聯合との接触をはかることになり、金源植事務総長と知己になった。
このような経緯によって、平和統一聯合とは姉妹関係にある世界平和統一家庭連合の「2018神日本家庭連合希望前進決意二万名大会」に招かれる事になった。会場はさいたまスーパーアリーナであったが、韓鶴子総裁を迎えての記念すべき大会であるだけに、会場にはどことなく敬虔なムードが漂っていた。受付から私に定められた席に至るまでの案内者の誠意に満ちた、礼節を尊ぶ態度から、この家庭連合が並みの組織ではないことを感知することができた。
一階の、舞台近くの招待席に着席して、私は頭を巡らせて会場内を見渡した。びっしりと会場を埋め尽くした二万名にのぼる信者の人びとの熱気に圧倒されて、思わず感嘆の吐息をもらした。
大会のオープニングアクト「咲き誇る孝情の花」に始まる第一部では、聖歌讃美「聖苑のめぐみ」「国旗パフォーマンス」他の演目が粛然と披露され、韓鶴子総裁を迎えた参加者たちの興奮と歓喜が渦を巻いた。第二部で、もっとも印象的であったのは、全国女性聖歌隊による、韓鶴子総裁へのオマージュ「オモニム―紫の無窮花-」であった。
厳かな聖歌でありながら、したたるような抒情に溢れたその芸術性は聴く者を完全に魅了するものであった。この聖歌を耳にしただけで韓鶴子総裁が信者たちから一点の曇りもなく崇められている事実を感得する事ができた。
主賓紹介に続いて、韓鶴子総裁が登場した瞬間、会場内は霊感に打たれたかのような神聖な雰囲気が漲った。端麗な容姿に高貴な気品を漂わせた韓鶴子総裁は、まるで神霊から授けられたようなカリスマ性を湛えていて、信者たちを、霊感をもって信仰的統一に導いているかのようであった。
韓鶴子総裁の講演は、内に信仰を秘めた穏やかさが特徴的であった。巧まざる抑揚の語調は全信者の信仰心を確かにするかの如くであった。講演終了後に花束贈呈が行われた時に会場の熱烈な拍手は、さながら信仰心の沸騰のようであった。続いて行われた記念パフォーマンス「伝統の旗手」、ダンス「無条件」、合唱「み旨の応援歌」などの演目は一分の隙もなく宗祖を絶対視する誓いに満ち溢れていた。
韓鶴子総裁に捧げる敬拝が、全参加者二万名の信仰心を昇華するが如く敬虔にとり行われたその時、私は無神論者ではあるが、信仰心というものの純粋性と偉大性に敬意を覚えた。私は、信仰心とは個々の人間の肌の内側と結びついた宗教的体験であり、このような体験は人間の直感でもなく理性をもって処理できるものではないことを実体験した。
つまるところ、信仰心とは人間個人の精神の風土の再現において成立するものであり、忘我、恍惚、陶酔の境地に誘い込むものではなかろうか。
最後に、全参加による決意表明と敬拝を見聞しながら、私は「世界平和統一家庭連合」はますます多くの人々を受け入れて発展するに相違ないと思わざるを得なかった。
韓鶴子総裁は「結婚生活で最も大切なことは信仰で一つになる事・・・」(「文鮮明自伝」207頁)と諭された文鮮明師の遺志に従ってその偉業を立派に継承されている。このことは、取りも直さず、文鮮明師がご自身の分身ともいうべき後継者を完璧に育成されたということであり、文鮮明師は全てを韓鶴子総裁に託して後顧の憂いなく聖和されたということができる。
民族の慶事である板門店宣言が宣布されて祖国統一の展望が開かれたことを契機に、韓鶴子総裁が平壌を訪問され、金正恩国務委員長と再会して、祖国統一のための会談をなさって下さることを、私は心から願っている。
2018年盛夏 辛英尚