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黄七福自叙伝「母国訪問推進委員会結成のこと」/「朝総連が必死で妨害したこと」

 

黄七福自叙伝53

「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」

 

第4章 民団大阪本部の団長として

母国訪問推進委員会結成のこと

民団大阪本部は三次にわたり百五十六人の朝総連系同胞を四十年、五十年ぶりに懐かしの母国を訪問させたが、一九七五年十月十九日、同本部で、それら百四十人を招き「特別母国訪問歓迎会」を盛大に催した。

私は、

「朝総連の詭計と脅迫など幾多の組織的な妨害工作を敢然とはねかえし、なつかしい母国を訪ねた同胞に熱烈な歓迎と激励の意を表する。この事業は今後も大規模に継続実行する一方、いまだ北傀の虚偽宣伝にだまされ、その鎖につながれている同胞たちにも祖国の真の姿を知ることのできる道が開かれ、在日同胞社会に真実の新風が活気よく起こることを期待する」

と挨拶した。

訪問団代表の尹平夏さん(五十四歳、前朝総連婦人会西成支部会長)は、

「過去を一切問わず、赤十字精神と人道主義の基本精神に沿って実行された今回の母国訪問では三十余年間の過誤を払いのけてくれた。感激の母国の土を踏んだ日々は一生忘れられないものでしょう。金日成は”南は地獄、北は天国”といっていたが、こんどの訪問で直接、自分の目でみて北傀の虚偽宣伝にだまされていたことを知った。今後は同胞たちに本当の母国を伝え、母国訪問事業を施して下さった皆さんに感謝します」

と述べ、万雷の拍手喝采を浴びた。

本国では、この朝総連系同胞墓参訪韓事業を汎国民的事業として位置づけ、実施していくために、一九七六年四月二十五日、社団法人在日同胞母国訪問推進委員会が設立され、初代委員長には李皓大韓赤十字社総裁が選出された。

大阪地区でも同年七月三十一日、大阪市東成区民会館で大阪母国訪問推進委員会(正路会)が結成され、母国を訪問した朝総連系同胞ら五百人余が参加した。

全在徳駐日公使、趙一済大阪総領事、曺寧柱民団中央本部団長、私、黄七福民団大阪本部団長らが見守るなか、会長に梁瑞鳳、副会長に萑信吉、車庸柱、尹平夏を選出し、七・四南北共同声明の精神と人道主義に立脚し実施している省墓団事業を積極的に推進することを決議した。

 

[決議文]

一、われわれは、七・四南北共同声明の精神と人道主義に立脚し実施している省墓団事業を積極的に推進する。

二、われわれは、北傀金日成徒党の南侵戦争策動に反対し、朝総連・韓徳鉢一派の虚偽宣伝と妨害策動に果敢に闘っていく。

三、われわれは、省墓団同胞たちに対する朝総連の人身攻撃、脅迫、恐喝などの蛮行を断固排撃し、その身辺保護に最善を尽くす。

四、われわれは、朝総連の影響下で、いまだに騙されている同胞たちを温かい母国の懐に抱かせてくれた訪問事業に、日本赤十字社は人道的主義に立脚して積極協助支援するよう要請し、良心的な世界世論に呼訴していくことを誓い、ここに決議する。

 

朝総連が必死で妨害したこと

民団が推進する朝総連系同胞の母国墓参事業は、朝総連組織にとってはどうしても阻止したい事業であった。

時に、熊本県在住の青年が旅行中のソウルのホテルから飛び降り自殺するという事件が発生した。

この事件の悪用を考えた朝総連大阪本部は、「人道主義が死の道とは」との見出しをつけて、「殺害され、遺族も遺体との対面を許されない」などを内容とする虚偽ビラを多数、大阪市内 の街頭各所で配布するという悪質な事件が発生した。

このため、父親の金基俊(五十六歳、民団熊本県本部顧問)と母親の金宗分さんは一九七六年五月、朝総連大阪府本部委員長の申相大と同本部宣伝部長の洪性雲を虚偽流布と名誉毀損だとして、大阪府警に告訴した。

また、民団大阪本部も私、黄七福の名で「虚偽の悪宣伝は朝総連系在日同胞の母国訪問事業を妨害するものである」として大阪府警に告訴した。

 

[声明文]

朝総連は最近、朝総連系同胞の母国訪問事業の妨害策動に血眼になっている。本団は、これに対して民族的正義と人道の名のもとにおいて糾弾することを声明する。

母国訪問事業はいまや国内外で賞賛を受けているのは周知の事実である。なぜなら、この事業が祖国大韓民国の平和統一の足がかりとなり、またそれにも増して人間が生を受けて郷里に帰るというのは人間の本然の使命であり、天賦の権利であるからである。母国訪問事業は昨年七・四南北共同声明三周年を迎えたのを契機として展開されたものである。

この事業が大韓民国でなく、日本で展開されている背景は北朝鮮の病的なまでの戦争狂的体質を考えなくてはならない。北朝鮮は周知のように、一方では南北対話に応じる態度を示しながら、他方では七・四共同声明発表のときから南侵用トンネルを掘っていた。

これに示されるように、北朝鮮の南北対話に応じる態度はあくまでも南侵赤化統一に利用するためであった。しかし北朝鮮は南北対話を通じて直接大韓民国の発展を見聞し、共産革命の素地を見いだすことができないと悟るや、逆に北朝鮮の閉鎖社会の地獄相を知られるのを恐れ、南北対話を一方的に中断したのである。

それ以後大韓民国側が「老父母再会」「墓参訪問団交換」など急を要し、実現しやすい人道的な問題から解決して相互不信を取り除こうと提案しているにもかかわらず、北朝鮮は理由にもならない理由をつけて拒否しつづけている。

南北対話の必要性は、南北朝鮮が長い分断の果てに相互不信に陥った、その不信を取り除くことにあるのであり、北朝鮮の主張は全く逆のことを強弁しているのである。朝総連系同胞の母国訪問事業はこのような北朝鮮のかたくななまでの平和統一拒否姿勢に対して、日本で展開されることになったものである。

ところが北朝鮮・朝総連はこの事業にまで妨害の魔手を伸ばしている。それらの妨害策動が圧倒的な母国訪問者の前に何らの功を奏さないと見るや、「母国訪問者の中には朝総連は一人もいない」と、とんでもない虚偽宣伝を持ち出してきた。

仮に朝総連のいうように「母国訪問者の中に朝総連系同胞が一人もいない」とすればなぜ朝総連達は全組織を動員してあれほど執擁に妨害の限りを尽すのか。そのこと自体が母国訪問者が朝総連系であることを証明しているではないか。また世界のマスコミも朝総連系同胞であり、平和統一への足がかりだと評価するからこそ、賞賛の言論を掲載しているのである。

朝総連は最近また、民団の一青年として家族で韓国を旅行中、ソウルのホテルで自殺したのを千載一遇のチャンスだとばかり家族の話までデッチあげて妨害策動に血眼になっている。

朝総連は母国訪問という在日同胞全体の権利を踏みにじったばかりか、最後のあがきであるのか、死者の魂までも冒涜するという天人共に許すことのできない蛮行を犯しているのである。

われわれは朝総連のあらゆる妨害策動が母国訪問事業という天賦の権利の前に崩れ去る日は間近であると確信している。朝総連は一日も早く民族の良心に立ち帰り、真の平和統一への参加者になることが残された唯一の道である。

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