記事一覧

高齢者の運転事故などから思うこと

 このところ、高齢者の運転事故が多発している。

 ブレーキとアクセルを踏み間違えてしまって、ガードレールにぶつかったり、家屋や店に突っ込んだりしているシーンをドライブレコーダーから見ると、高齢者の運転免許の返納問題が浮かんでくる。

 高齢者と一概に言っても、すべての人がそうではないので、これは高齢と共に起きて来る機能低下、意識の集中力の低下という肉体年齢の金属疲労的な側面と、健康な高齢者を区別しなければならない。

 やはりケースバイケースで考えなければ、根本的な解決にはならないだろう。

 その上に、地方では車は必要不可欠なので、一律的に高齢者はすべて免許返納ということは不可能に近い。

 しかも、同じ高齢者といっても人口密度の多い都会と人口が少ない地方都市や農村などでは、車の運転に対する意識の集中度の違いがある。

 都会のような人口も多く、通行人が絶えずいて、車もひっきりなしに往来している道路事情では、どうしても注意しなければならないことが多く、絶えず緊張状態に強いられる環境になっている。

 どうしてもストレスが多いので、肉体的にも精神的にも疲れやすい。

 集中力が欠けやすい。

 ところが、人や車の往来が少ない田舎の街だと、そうした極度の緊張を強いられることはないので、事故も少ない気がする。

 広い道路や人気のあまりない農道を走っても、それほど高齢者でも運転はストレスがあまりないので難しくはない。

 そうした都会と地方の環境の違いがあるので、判断が難しい。

 また、若い時と高齢になった時の身体機能の差によっても事故率が変わって来る。

 若いか高齢かによって、反射神経や動体視力といったものの対応能力に大きな差が出てくるのである。

 若者であれば、緊張状態を持続していくことは体力的な面からも高齢者よりも難しくはないだろう。

 それに対して、高齢者は緊張状態を長時間続けることは、肉体的な限界もあって、難しいのではないだろうか。

 だから、ふっと緊張状態が突然停止して、一瞬の間、意識がコントロールできなくなってしまう。

 それが事故につながっていく一つの要因ではと考えている。

 高齢者の認知症や徘徊などは、こうした意識障害、コントロールができなくなった状態であるともいえるかもしれない。

 とはいえ、私は専門家ではないから、この問題についてはただ推測するだけである。

 ただ、私自身、高齢者の肉体的な様々な問題を実感しつつあるので、他人事ではない気がしている。

 もちろん、私は運転免許をもっていない。

 免許を取りたいと思ったこともない。

 運転すれば、事故を起こしてしまう恐れがあるからである。

 この背景には、私がやはり突然、意識が途切れるような瞬間を時々体験することがあるからである。

 一瞬のことだが、意識が無くなってしまう。

 最初は、大学生時代の新聞配達の体験がある。

 自転車のペダルを踏みながら、ふっと気が付くと、一瞬眠りに落ちてしまうことがあった。

 ハッときづいたときは、道路ではなく、垣根を走っていたという経験がある。

 自転車の車輪がからまって、転倒して目が覚めたのである。

 このときは、本当に軽いけがですんだのだが、やはり睡眠不足が原因だったと記憶している。

 そのときは、開店していた店のシャッターが突然降りて来るというようなイメージだった。

 以来、睡眠には気をつけるようにしているが、高齢者になって別な問題が起こるようになった。

 それがスマートフォンの問題である。

 スマホをもちながら、画像などを見ていると、突然の眠気によって、手に持っていたスマホが落下するのである。

 その音によって、ハッとなって意識が回復する。

 まさに、スマホ依存症のゆえであるけれども、何度もスマホを落しているうちに、液晶画面にひびが入るようになった。

 車の運転とはまったく違うけれども、ハンドルを握っている手の感覚、ブレーキとアクセルを踏むときの感覚、それは案外似ているのではないかと思う。

 こうした傾向がある私が車の運転免許を取ったら、どうなるかは火を見るよりも明らかである。

 なぜこうしたスマホの落下現象が起きるのか。

 自分なりに考えると、やはり人間の基本的な集中力の時間は限られているからだろう。

 その上、スマホの画面は小さいので、意識して見ることをしないといけない。

 こうした意識を酷使することが、小さい事故としては手からスマホを落下させ、ハンドルを誤まらせ、アクセルとブレーキを間違えるという行動につながっているのではないだろうか。

 スマホと車の運転は違うと思っている人もいるかもしれないが、基本的に眼や意識を酷使するということでは共通している。

 改めて、肉体の老化という過程から見ても、機械操作というものへの集中力が自然に衰えて来るのは仕方がない。

 その意味では、高齢者の運転免許返上というのは、基本的にはやむを得ない流れだろうと思う。

 そういえば、私の妻も最近、運転免許を返上している。

 妻の場合は、ペーパードライバーなので、返上に関しては、思い入れはあまり無かったようだ。

 ただ、免許を取得していない私には、妻が運転する車で、日本全国を車中泊をして回りたいという夢があったので、少しばかり残念だったことを告白する。

  (フリーライター・福嶋由紀夫)

関連記事

コメントは利用できません。