黄七福自叙伝01
「ああ祖国よ 我れ平壌で叫ぶ時 祖国は統一」
発刊のことば
齢八十を過ぎると、頭の中は過去のことがいっぱいつまってしまって、将来を考える余地はほとんどなくなってしまう。
思えば、私の一生は、私なりに祖国の独立を願い、民族の栄光をもたらす真の指導者を求めての闘争の歴史であったように思う。
解放前は、祖国独立の真の指導者を求めて様々な本を読んだことや、解放後は祖国のために身を挺し、民団大阪本部の団長として、在日同胞のよりよき姿を求め、反共活動のために勝共運動に協力してがむしゃらにやってきたことを昨日のことのように思い出す。
私の闘争が華やかなりしころ、竹下登さんや中曽根康弘さんなどにお会いし、そのときに書いていただいた色紙も多い。特に中山正暉さんとは懇意にし、いろいろな面でお世話になった。
その達筆に常々敬服している中曽根康弘さんの色紙のことばを釉薬にして焼いた湯飲み茶碗を私は常日頃愛用しているが、それを手に過去の思い出にふける日々も多くなった。
朴正熙大統領治世の時代は、すでに遠くなったが、現在の韓国の繁栄は朴大統領の時代にその基礎が築かれた。実に感慨深いものがある。
当時の祖国・韓国の経済力はほんとうに微々たるものだった。その祖国の経済復興に在日同胞がどれほど貢献したか。
その貢献の度合いは、檀君の神檀樹に永遠に刻まれてもいいのではないかと思うほどの功績だと信じている。
その際に手引きしていただいたのは、今は亡き丁一権先生であり、また金鍾泌氏らだった。
祖国に不案内な私たちに対し、適切な助言を与えてくれて、いろいろなところに案内してくれた。あらためて深く感謝申し上げたい。
私は現在、平和統一聯合関西連合会の会長という職責にあり、望むものはただ一つ祖国の平和統一である。その日は遠からず必ず来ると信じている。
私は反共と闘士として知られているが、その私が平壌で自由に叫ぶことができるその日。それが祖国平和統一の日だと確信している。
その日が一日も早く来ることを願う。
そのためにも、私は、私が生きてきた過去を整理しておく必要を感じた。それが、本書である。
在日同胞にとって、民団は必要不可欠の組織である。が、最近、その民団の存在を軽視し、あるいは不要論まで見られることは、民団大阪本部の団長を経験した私の目からみて、まことに残念である。
それは、植民地時代の受難を人ごとのように感じているか、あるいはそのような受難の歴史に対して無知であるからにほかならない。
私たち韓民族の五千年の歴史をさかのぼれば、受難の歴史も数々経験してきたが、栄光の歴史も数々記録されていることを想起しなければならない。
そうした歴史を知れば、私たちは世界に胸を張って、正々堂々と生き抜く力が湧いてくるはずだ。そして、韓民族の団結があれば、世界に燦然と輝く存在になるはずだ。
韓民族の一つの集団である在日同胞も団結すれば、輝かしい民族共同体が構築できるはずだ。そのためには過去を正しく検証して、未来につなげなければならない。
私は、その意味からも、私の過去を検証することで、未来に向けての一つの指標が示されれば望外の喜びである。それが、本書を発刊した目的である。
最後に、本書の発刊に携わっていただいた方々に厚く厚く感謝申し上げます。
二〇〇九年秋 自宅にて
黄七福(ペンネーム 八福)